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2013年、3ピース・バンドのイヤーズ&イヤーズは自分たちに最終通告を課した。それはまさに、いちかばちかだった。「リアル」という曲ができあがり、リリースする準備ができていた彼らは、すべてをなげうち、自分たちの今後の音楽活動に決着をつけようとこの曲を発表した。リードシンガーのオリーは次のように言う。「当時の僕らは、資金が不足していた。だからこの曲がうまくいくかどうかを見届けなければと思っていた。所属レーベルのキツネからはあと1枚EPを出すことになっていたから、ここで賭けに出て、皆の度肝を抜きたいと思っていたんだ。僕らは何人ものプロデューサーと話をしてアドバイスをもらい、懸命に取り組んで、とにかく実行に移したんだ」。こうして完成した「リアル」は、そんな彼らの期待に応えるように爆発的な人気を博し、ユーチューブや音声ファイル共有サービスのサウンドクラウドで100万以上の再生回数を記録。結果、日本でのライヴが実現し、ポリドールの目にも留まった。彼らは完全に新しい道を進むことになったのだ。 イヤーズ&イヤーズのメンバー、オリー(ヴォーカル)、エムリ(シンセサイザー、リズム担当)、そしてマイキー(シンセサイザー、ベース)の3人は、それぞれ異なる形で音楽の世界へと入った。オリーの場合、曾祖母がピアノを遺してくれたことが、彼の子供時代のソングライティング熱に火をつけた。そしてこれが、かなり自己流ではあるがボイストレーニングにも役立ったようだ。「全校集会用の曲を作ったんだ。失恋の曲だよ。これで自分の進むべき道も決まったと思う」とオリーは笑う。「それから僕は、ジェフ・バックリィやジョニ・ミッチェル、ボブ・ディランといったソングライターに夢中になったんだ」。マイキーがオリーと出会ったのは、共通の友人のディナーパーティの席だった。マイキーは当初、自分のバンドに入りたいというオリーの申し出を丁重に断ったが、その後オリーがシャワー中に歌うのを聞いてすぐに心変わりした。「マイキーとオリーが会った時はその場にいなかったけど、僕はすでにバンドのメンバーだったんだ」と語るのはエムリだ。「最初は“マジかよ、こいつはいったい何者なんだ?”って思ったね。だけど実際にオリーの歌声を聴いてみて、彼が素晴らしい声の持ち主だとわかったんだ」と当時の様子を振り返る。 俳優のベン・ウィショーが出演したことや、デヴィッド・リンチ監督の映画のような奇想天外なストーリー展開も手伝い、「リアル」のミュージックビデオは『Dazed』誌のウェブサイト『Dazed Digital』や『Interview』誌にも取り上げられ、曲への関心をさらに高める結果となった。オリーはバンドの知名度を上げるため、自分の俳優としてのキャリアに頼る必要があったと振り返る。「僕らは、自分たち自身を撮るというアイデアを考え付いた。『リアル』は他人にジャッジを下されるという内容の曲だ。だから逆に、自分たちが他人を評価する側に回るのはいいアイデアだと思ったんだ。僕はビデオにダンスのシーンを取り入れたいと思っていて、ちょうどベンと一緒に仕事をしたところだった。彼は才能のあるダンサーだよ。かなり怪しくて独特だけどね」 イヤーズ&イヤーズの曲の多くは、オリーのピアノで始まり、そこから彼らの真骨頂である幻想的かつエレクトロなインディー調のメロディへと進んでいく。ここ最近の曲のクオリティは、主にバンドのビートメーカーとして知られるエムリによるところが大きいと言えるだろう。「最初にみんなで集まった当時、僕はギタリストだった。でもギターを手にしてみて思ったんだ。自分はすでに、ギターでできることはすべてやり尽くしてしまったんだとね。だから僕は、シンセサイザーやリズムを担当することにして、それまでとはかなり異なるアプローチで音楽を作り始めた。トリオとしての僕らの好みが全体的にエレクトロ寄りになっていく過程で、僕は制作サイドを手掛けることになったってわけ」。そんな彼らのビートは、ハウスミュージックとエレクトロニカの突然変異から生まれる。それがオリーの情熱的な歌声と、催眠術にかかったような激しいリズムで補われている。アントニー・ヘガティがTEDの講演会にゲスト出演した時、または豪アーティストのフルームが失恋した時の様子を想像してみるとわかりやすいだろう。 イヤーズ&イヤーズのメンバーを1つにまとめるサウンドについて、彼ら自身はあくまで、インスピレーションを受けたのはほぼエレクトロニカだけと感じている。しかし、それぞれの持つバックグラウンドも無視はできないだろう。例えばマイキーは、自称“クラシック音楽とドクター・ドレー”という音楽環境で育った。彼には、父親が所属していたアルゼンチンタンゴのオーケストラの一員として演奏した経験もあった。その結果、マイキーの音楽的なバックグラウンドによるフックの重厚さや感情をむき出しにした曲の数々が、イヤーズ&イヤーズでは心躍るようなハウスとR&Bの構造を通して表現され、鮮やかでクセになりそうなポップスの複合物として新たに生まれた。とは言うものの、彼らのトラディショナルな経験の多くは、そのままパフォーマンスの手法に受け継がれている。「僕らの音楽がラップトップではなく、大半が楽器で作られているというところが大事なポイントなんだ。僕らは今でもそうやって曲を書いているし、そこはバンドの持ち味としてずっとキープしていきたいと思っている」とマイキーは言う。 彼らの次の作品『テイク・シェルター』は、前作のEP『リアル』の衝撃を活かしているようにみえる。リード曲の「テイク・シェルター」は聴く人を鼓舞し、なおかつ興奮させるものだ。この曲は、シンセサイザーとスローダウンしたヴォーカルのリフ、そして行進しているかのようなスネアの音が響きわたり、思わず引き込まれそうになるダンスホールのビートが中心となっている。エムリは曲の構想をこう説明する。「自分の歌声を繰り返して、その速度を上げたり落としたりできる新しいソフトウェアを見つけたんだ。かなり不思議で気味の悪い、おどろおどろしい歌声が繰り返し吐き出されていくんだよ。僕がそうやって作った音源をオリーに送り、彼がそのリフをもとに曲を書いた。最高の曲はいつだって、あっという間にでき上がるものさ」 EP『テイク・シェルター』では、他の2曲も引き立て役となっている。その1つである、リードシングルのアンプラグド・バージョンを聴けば、オリーが自分のピアノで、どのように数々の曲を作り上げているかが想像できるだろう。そしてもう1曲は、意外にもカバー曲だった。「僕らは、これまでとは違う一面を見せられるような曲を必要としていたんだ。だから、ブルー・カントレルの『ブリーズ』を選んだ。曲のカバーっていうのはいつだって注意が必要だね。でも僕は、皆が思い出せるけど、大ヒットとはならなかった曲をカバーすることがクールだと思っていた。自分たちと似たような曲をカバーしたいとは思わないだろう。それ以外ならどんな曲でもいいんだけどさ」 イヤーズ&イヤーズに影響を与えたものをと聞くと、あらゆる答えが返ってくる。音楽プロデューサーのフライング・ロータスに、映画監督のガス・ヴァン・サント、詩人のアン・カーソン、画家のエドワード・ホッパー、そして写真家のフィリップ=ロルカ・ディコルシアといった具合だ。彼らが自分たちの音楽における二面性に対して共通した概念を持っていることは明白で、例えば「リアル」の中では喜びと悲しみが同居し、その瞬間を捉えている。リードシンガーのオリーは、「テイク・シェルター」の歌詞が二面性をよりはっきりと強調していると語る。「僕にはひどい終わりを迎えた恋愛経験がある。この曲では、自分が誰かのもとに戻った時にしてしまうことを書いたんだ。それは間違っているから、戻るべきではなくて、最悪の結末になるってこともわかってる。最終的にはつらい結末を迎えると頭で理解している一方で、なぜか安堵も覚えるという内容だよ」。それこそが、メンバーのマイキーが言うところの、聴く人を“泣かせては、躍らせる”曲なのだ。 新たにポリドールと契約したことで、メンバーは皆それぞれの仕事を辞め、音楽に完全に集中できるようになった。彼らはすでに新進気鋭のポップアーティスト、ムーと一緒にツアーに出ただけでなく、ロンドンでの単独公演も完売させ、さらに熱狂的なファンの数を増やしている。「僕らにはオリヴィアっていう、筋金入りのファンがいるんだ。彼女は僕らのギグに来るか、自分の代わりに誰かをよこすんだ。ショーの終わりにはM&Msのチョコレートや、僕らの顔をあしらったスタンプなど、ちょっとしたプレゼントを抱えた人がやって来るんだよ」とオリーが笑いながら明かす。「彼らは皆、『オリヴィアに頼まれて来た』って言うんだ」 この夏はさらに多くの公演が決定済みのイヤーズ&イヤーズ。彼らのスケジュールは、長いながらもエキサイティングな制作とパフォーマンスで埋め尽くされている。「2015年に、アルバムをリリースする計画があるんだ」と、オリーは言う。「曲は次々とできてはいるけれど、僕らは慎重に進めたいと思ってる。完璧な形にしたいからね」
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