まだあまり知られていない注目の曲をお届けする「HAYAMIMI」プレイリスト。今回はミュージック・バイヤー兼音楽ライターである星川慶子氏が
HAYAMIMISTとして登場。同氏による解説と共にお楽しみください!
【解説】
世界中で膨大な数の作品がリリースされ、意識しなくても新しい音との出会いはやってきます。
でも意識していないと、どんどん通り過ぎて行ってしまうことも。
今回は、この作品とても気に入っているのに未だ余りヒット回数が少ないと感じた近年の作品をピックアップしています。
「HAYAMIMI」コンセプトのひとつでもある、未だ知らないアーティストの作品を聞いてみる、というきっかけになったら幸いです。
●Gigi Masin / Maja
オランダ発、エレクトロニック・ミュージックを中心としたビッグ・フェスティバルと連動し運営されるレーベル、Dekmantelの10周年を記念した2017年に発表されたコンピレーション・シリーズの中からの1曲。ヴェネチアのアンビエント巨匠、Gigi Mashinによる新録音源。荘厳な気配を持ったミニマリズムで、そっと「夜」に寄り添ってくれる作品。
●Beatrice Dillon & Call Super / Fluo
ベース・サウンドとミニマル・テクノサウンドが程よくミックスされた良作が続くレーベル、Hessle Audioからの1枚。エレクトロニカ・エッセンスなメロディーワークとグルーヴ感のある4/4のビート打ちでミニマル・ハウス系にも呼応するサウンド・デザインをクリエイトした秀逸な作品。オーボエなどを導入した管楽器による、飽きさせないパート展開が素晴らしい。
●The Other People Place / Sorrow & A Cup of Joe
デトロイト・エレクトロシーン伝説のユニット Drexciyaを始め、Transllusion、Shifted Phases、Electroids、Lab Rat XL等の様々な名義で多くの名盤を残し、2002年に急逝した名手 James Stinsonによるプロジェクトのレア作品が2017年に復刻。再評価高まるエレクトロ・サウンドに於ける名作のひとつ。
●The Maghreban / Lose It
イナたいベースラインやハンドクラップなど90'sシカゴ・アシッドハウスをアップデートしたクールなベース・ハウスサウンド。
Clap! Clap!も名を連ねる UK名門レーベル、Black Acreからアナログ感むき出しのロウな雰囲気が痛快。
2017年に入ってからは未だリリースはないが、新作にも期待をしたい。
●Cop Envy / Head Mark
Opal Tapesの姉妹レーベル Black Opalからデビューを飾り、Sean Thomasとしても活動するCop Envy。
オールドスクールなリズムマシーンを巧みに使用したダークなロウテクノ。
●Jlin / Enigma
ジューク/フットワーク・シーンに新たな風を吹き込んだインディアナ州の女流アーティスト、Jerrilynn PattonことJlin。
メロディーまでをもリズムで生み出しているかのようなプリミティヴで多彩なパーカッション・ワークに一気に引き込まれる圧巻な作品。
●Second Woman / IE/P
Telefon Tel AvivのJoshua EustisとBelongとしても知られるTurk Dietrichによる注目のユニット Second Woman。
無駄の無いエクスペリメンタルなIDM/ミニマリズムを追及する姿は圧巻。これまでにリリースされた2枚のアルバム『Second Woman』そして『S/W』と連動性を感じつつも、本作はAphex Twinに出逢った頃の衝撃にも似た、自身の初期衝動みたいなものを思い起こさせてくれたビート・ミュージック。
●WaqWaq Kingdom / I Would Like To Let You Go
欧州で活躍する邦人アーティスト、DJ Scotch Egg+Kiki Hitomiとエクスペリメンタル系イタリア人パーカッショニスト、Andrea Belfi から成るユニット、WaqWaq Kingdom。ダブやクンビア、ベース・サウンドの中に、多国籍でもあり無国籍でもある両イメージが混沌としたエキゾチック感を落としこんだフューチャリスティックなスタイルがユニーク。
●Nicola Cruz / Puente Roto (EVHA Remix)
多彩な楽器群使いでクンビアやハウス、Nu-Discoを横断するマジカルでレフトフィールドな作風で魅了するエクアドルの気鋭、Nicola Cruzが2015年に発表したファースト・アルバム『Prender El Alma』からのリミックス作品。2017年度に入り話題の辺境派レーベル、Multi Cultiからの一連の作品が軒並み素晴らしい出来なのでそろそろフルレングスのアルバムにも期待を込めてご紹介。
●Red Axes / Sun My Sweet Sun
最新アルバム『The Beach Goths』では集大成といえる、さまざまなジャンルを吸収したサウンドを惜しげもなく披露したイスラエルの辺境 Nu Discoデュオ、Red Axes。先頃リミックス作品も発表されたばかりでもあり、本編でのご紹介作品はコンピレーション収録曲となっていまいますが、やはりこのオリジナルが一番密林へと引き込んでくれる傑作なので。
●Steven Julien / Chantel
Floating Pointsが主催するレーベルEgloからデヴューを果たし、自身もロンドンで先鋭レーベル Apronを主催、デトロイトの新世代アーティスト、Kyle Hallや Delroy Edwardsとのコラボレート等でも注目される Steven Julien。テクノ/ハウス/ジャズ~ファンクを内包しアップデートしたエレクトロニック・サウンド。
●Mndsgn / Lather
L.Aを拠点にするビート・メイカー、Mndsgnのよる2016年度の傑作アルバム『Body Wash』からの1曲。
80'sファンク/ソウル/ブギーサウンドと90年代の R&Bシーンをイメージしたというサウンドスタイルで魅了するメロウなエレクトロニック・ファンク。幾度となく耳を傾けても、そのドリーミーなハーモニーにとろけさせられ夢心地な空間を与えてくれる。
●Yves Tumor / Blood & Innocence
70年代のソウル・ミュージックとクラブ経由なエクスぺリメンタル/ヴェイパー・ウェイヴ・サウンドを昇華し新たな次元をクリエイトするイタリアのモダン・ソウルマン Yves Tumor。こちらは、一躍注目を集めるきっかけとなった前衛レーベル"Pan"から2016年に発表されたアルバム『Serpent Music』以前にセルフ・リリースされていた音源で、ブレイク前夜の匂いがプンプンとする作品。
●Jonny Nash & Suzanne Kraft / Time, Being
Gigi Masinとのユニット、Gaussian Curveとしても活躍する Jonny Nashが盟友 Suzanne Kraftとタッグを組んだ作品。
ブルージーなギター・パートとウッドベースの音色がアンビエント・サウンドに静かに溶け込んでいく様に感じる心地よさは格別です。
All texted by 星川慶子
プロフィール:星川慶子 (ミュージック・バイヤー/音楽ライター)
日本のダンス・ミュージックシーンの発展に大きな貢献をした渋谷のレコード村、Cisco Techno Shopで店長/バイヤーとして活躍。
同社が運営していたレーベルの制作物に於いてアーティスト及び楽曲のセレクションなどにも参加、音楽系ライター業もこなす。
現在はアナログレコードとCDの巨大オンライン・ショップと京都、下北沢に実店舗を運営するレコード・ショップJET SETにてバイヤーとして勤務。
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