Track byarai tasuku
小さな頃、 母さんがよく話してくれた、 大好きなお話があるの。 昔々、全ての動物は真っ白けで、 それを憐れんだ神様が、 ある日みんなに好きな 色をあげるよって。 色とりどりの絵の具を入れた バケツを用意した。 動物たちは嬉しそうに集まって、 思い思いの色を 自分の体に塗ったの。 「黄色、ピンク、青、緑・・・ みんな彩られて嬉しそう。 楽しそう。 あたしは自分を誰よりも 美しい色に飾りたくて、 全部のバケツをひっくり返して、 全部の色を体に塗ったの。 全部。全部。全部・・・・」 それ以来、 誰も彼女を振り返る 人なんかいない。 私は彼女が 真っ黒になってしまったなんて、 信じていない。 彼女はきっと、 思い描いた通りの夢のような 虹色の翼で この世の全ての視線を 釘付けにしたはず。 「ごめんなさい。」 彼女の名は『___』。 私には、 彼女が夢見た世界が見えるの。