生まれてきたけれど 生きてみたけれど 小さな海ばかり 流れる悲しい日々 遠くで見るとあんなに 青く美しい海も 近づいてすくってみると 汚されたただの塩水だった あの頃訳も分からず いつか陽は射すものだと信じていた 甘い香りの光に目をやられて 虚を実と思い込んでいた 恋してみたけれど 愛してみたけれど か弱く飼い馴らされた 心が壊れていく 「誰かがいてくれれ ば優しくなれる」 そんな美しい嘘を独り呟いてみた 掌のスマホの画面 こことはまるで泥と雲 何も気付かぬまま この綺麗な地獄で朽ち果てたかった うつむいて誰かを待っていても 別れを伝える人もない ふたつの掌を見つめて 小さな海にふれてみた あなたの手にふれてみたい